【記憶１】

あなたが初めて皆本 誠一に会った時、皆本 誠一はあなたの手を握ったまま、あなたの目をじっと見つめていた。
その時、あなたの中に不思議な力が生まれたような気がした。
その力が透視能力であり、あなただけの特別な力だ。
そして、初めて透視ができたお祝いに皆本 誠一が綺麗なメダルをプレゼントしてくれた。
これは、皆本 誠一の両親がこの研究所を作った時に記念で所員に配られたものを模して作ったもの、あなたは研究所の仲間として認められたような気がした。

【記憶２】

超能力が目覚めた頃から、喉の調子が悪くて以前ほどカラオケで高得点が取れなくなった。
これからスターになるために、もう一度調子を取り戻したいと思っている。

【記憶３】

透視能力を使って、皆本 誠一の机の中を調べると、マル秘と書かれた資料が見えた。そこには、皆本 誠一とその弟にも何か能力があったようだが、その能力のせいで弟は研究所を出て行ってしまい、今は行方が知れないという事が書いてあった。

【記憶４】

ある日、皆本 誠一から、３人目の超能力者として大衡 快斗を紹介される。
テレポーテーションを使う超能力者だそうだ。
そして「あなた達の存在を世の中に公表して超能力の存在を世間に知らしめたい」と言われた。
あなたと大衡 快斗には異存はなかったが、上田 怜二は自分の能力が世の中に伝わった時にどんな扱いを受けるのか少しだけ心配をしていた。
最終的に超能力を発表する事になり、今の超能力ブームが始まった。

《朝》

研究所内の自分の部屋で目を覚ます。
今日は、超能力の公開実験、世間的に言うと超能力対決が行われる。
ここで、あなたの力を見せつければ、あなたは一躍、時代の寵児となるだろう。
そうなれば、もう皆本 誠一の管理下から抜け出し、自由に自分の力を使ってスターを目指せる。

あなたも無意識に緊張していたのかもしれない。
時計を見ると9時頃。まだ少し時間があるため研究所内を散歩する事にする。
散歩中、また研究所内をうろついて写真を撮る輪田 光太郎の姿を見かけた。
その後、大衡 快斗が上田 怜二の部屋の方からやってきた。
あなたに気づかず自分の部屋の方へ向かっていったが、何の用だったのだろう。

大衡 快斗、上田 怜二の３人と一緒に10時半ごろに朝ご飯を食べて、自分の部屋に戻る。
部屋に戻ってすぐに皆本 誠一がやってきて、あなたに言葉をかけてきた。
「あなたには謝罪をしなくてはならないかもしれない。私は君たちの可能性を奪ってしまった。本当にすまないと思っている。今日で最後になるかもしれない。その後はしっかりフォローをさせてもらうつもりだ。」
皆本 誠一は、公開実験の後、詳しく説明すると言って部屋を出ていった。
…何を言ってるんだ？今日で最後？皆本 誠一は何をするつもりなんだ？
頭の中に疑問符が浮かぶが、全く答えは見えてこない。
奪うと言っていたが、もしかしたらあなたの能力を奪うつもりなのか？

あなたは慌てて、透視の能力を使うと、廊下を歩く皆本 誠一が大衡 快斗の部屋に入っていった姿が見えた瞬間、ブレーカーを落とされたようにいきなり透視ができなくなる。

その後、何度か試してみるが、いくら試しても透視をする事ができない。
これが、皆本 誠一の言っていた〝奪う〟という事か。
あなただけの特別な力を奪うなんて絶対に許せない！
あなたは皆本 誠一に対して激しい憎しみを抱いた。

《公開実験直前》

すぐに皆本 誠一に抗議をしようと部屋を訪ねると、部屋の中には椅子に座った状態で絶命する皆本 誠一の姿があった。
あなたは、悲鳴をあげそうになるが、慌てて口をつぐむ。
皆本 誠一が死んでいる。
なぜ？誰かに殺されたのか？！
あなたは、動揺しながら、もう一度だけ透視ができるかを試してみる。
やはり透視はできなかった。
あなたから能力を奪ったまま、皆本 誠一は死んでしまった。

これでは、あなたが手に入れるはずだった名声やお金はどうなってしまうんだ。
あなたに透視の能力がなくなれば、声をかけてくれた芸能事務所に見放されてしまうだろう。
そこで、あなたは一計を案じる事にした。
皆本 誠一が死んでしまったのを、あなたの超能力の暴発という事にできないだろうか？
皆本 誠一の部屋を探ると、ナトリウムの粉末が見つかった。
ナトリウムは水に触れると発熱し、そのそばに燃えやすいものを置いておけば発火するだろう。
それを皆本 誠一の死体の胸元に仕込む。

実験の前に少し透視能力の調子を見ておこうと力を発動させた時に皆本 誠一の体の中に悪性腫瘍を発見し、もっとよく見ようと力を集中させた時に、力が暴発したという設定にしようと思ったのだ。
恩人の所長を救うために力を尽くした悲運の超能力者なら話題性は十分だろう。
それに、超能力で殺人を犯しても現状の法律では罰することはできないと聞いた事がある。
何とかこの設定を押し通して、あなたの力を世間に見せつけてやろう。
多少の無理は全部、超能力で説明してしまえばいい。
実験開始の頃にナトリウムが発火するように調整して部屋を出る。

自分の部屋に戻ると、初めて透視を成功させた時に皆本 誠一からもらったメダルが目に付く。
あの頃は超能力が認められるだけで嬉しかったな、とふと思い出した。
そういえば、このメダルは皆本 誠一も机の上に飾っていたはずだが、さっき机の上にメダルは見当たらなかった。

12時《公開実験開始時間》

公開実験を始めようと皆が実験室に集まってくる。
もちろん、その中に皆本 誠一の姿はない。
染屋 友樹が呼びにいってくると言って部屋を出ていった。
染屋 友樹はこの研究所に来るのは初めてだと思うが、部屋の場所は分かるのだろうか？
実験室から皆本 誠一の部屋までは、少し複雑な作りになっている。
皆本 誠一の部屋の方から大声と騒がしい物音が聞こえてきて超能力者全員で部屋に向かうと、そこには胸を焦がした皆本 誠一の死体と青ざめた染屋 友樹がいた。